2010年11月14日日曜日

健三 56歳 百姓党総支配

小檜山博著の「漂着」を読みました。

滝ノ上で農家をしている健三が、家出した妻を捜しに札幌へ出てくる
ところから始まります。
フィクションらしく、そんなことないだろぅ~という展開が続きます。
「まず、話し合おう」と妻へのメッセージを書いた、むしろ旗を掲げ4プラ前に座り込みます。
髪も髭も伸び放題、作業服に長靴姿。
どんどん話題になり、テレビ局から出演を依頼され生出演します。
しかも、有名な評論家と農業問題で討論するというもの。
討論の隙間に、妻に呼びかけるのが何ともおかしい。
その映像が反響をよび、健三の思想に共感する草の根が広がり、百姓党を立ち上げます。
全国を飛び回るけれど、投票日を前に倒れます。
なんと、病院に現れた妻が選挙活動を引継ぎ、
総選挙で過半数の議席をとり、政権党になるのです。
が、自分は妻と滝ノ上に帰り、百姓をする・・というお話しです。
これだけでは、ふざけているような健三ですが、
庶民の怒りをストレートに発信するので、気持ちいいのです。

テレビの生中継で健三は「日本のGDPにおける第一次産業の割合は1・5%。
この1・5%のために、98・5%の部分を犠牲にしてるって思ってるのか」と言います。
さらに、「この国の農業がなくなったらどうするの。
百姓は自分で作って食えるけど、都会人はどうするの。餓死するの?あんたたちの食糧問題。
あんたたちの命の問題なんだ」と言うのです。

なんと、現実の世界で「日本のGDPにおける第一次産業の1・5%のために、
98・5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」と
TPP参加について、前原外相が発言しましたね。

健三が聞いたら「やっぱり、思ってたんかい!」というところでしょうか。

今、政治の大問題に浮上したTPP問題を、この作品の中で 
健三がキレているタイムリーな作品です。

すごく、おもしろい・・読後、すっきりする本です。